第8章 ニンギョ×ト×ジョテイ
ねぇ知ってる?
人魚ってとても愛されたがりで愛したがりなのよ。重たいって思うでしょ?でもそんな事無いんだよ。人魚は恋愛にとても臆病なの。だってその恋が破れた時、泡になって消えてしまうのだから。
※※※
チェリーが襲われて…シャルナーク達が例の男を突き止めて一日後。メンバーは行動に移る。拠点は三箇所。雪国と南国に一箇所ずつ。アジトから一番近い飛行船乗り場から飛行船を乗り継いで五日もかかる遠いところ。もう一箇所は一日で行ける港町。
手分けして潰しにかかる算段もあったが、まずは一番近くにある港町の拠点を奇襲しようと言う事になった。
「チェリー、本当に良かったの?全然あたし達だけで何とかしてあげられるんだよ」
マチが心配そうにチェリーの顔を覗き込むと明るい笑顔を向ける。
『だいじょーぶ!自分の事ちゃんとするよ!』
「チェリー…」
飛行船に乗って港町に向かうはヒソカ、マチ、フェイタン、フィンクス、チェリーの五名。空回った元気を見せるチェリーにマチは心を痛める。
「♪」
「で、テメェは何にやにやしてんだよ」
「別に♤ちょっと助っ人を呼んであるからその人に連絡を取ってるだけさ」
「助人?そんなの要らないね」
「少しでもチェリーを安全な場所に置いときたいだろ?」
一同「………」
その言葉に否定の声をあげる者は居なかった。
※※※
「…侵入者です」
「ん?もう来たのか…早いな」
退屈そうに遊んでいたルービックキューブを投げ捨て監視カメラのモニターに張り付く。
「捕獲に行きますか?」
「ほっといてイイよ。どうせその拠点には虫の息の人魚しか居ないんだ」
にやり、と口元を歪めると投げ捨てたルービックキューブを拾いに行ってチャチャッと全面の色を揃える。
「再会は非情であれ」
※※※
「本当に此処であってんのか?人ゼロだぞ」
「地図的には間違いないんだけど…おかしいね」
「ビビって逃げちゃったのかなぁ♣︎」
十階立てくらいの小さくも無いが大きくも無いビル。つい最近まで人が居た様な気配はあるものの、人っ子一人居なくガランとしていた。
『………』
「…?どうしたか」