第7章 ニンギョ×ト×トウゾク
ガバッとフェイタンに飛び付くとぎゅーっと首に抱き着いて鈴の音の様な声を震わせる。
『助けてくれて…ありがとう』
「………分かたから離れるね」
嫌々と首を振るチェリーに観念した様なフェイタンはその小さな身体を抱き抱える。
「流石のフェイもチェリーには勝てねぇな」
「それ、皆言える事ね」
「確かにな…まぁ取り敢えず移動するか。人の気配は無いが多少派手な暴れになってる」
人が集まるのは時間の問題だ、と言葉を続けた。
※※※
『ごめん、なさい』
一同「………」
記憶が無いのがこんなにもツラいなんて知らなかった。自分に莫大な懸賞金がかけられてるのも人魚かもって言われても何も覚えて無くて。皆の顔と名前は覚えてたからそれで何とかなるって思ってた。
何だかんだ言って皆が優しいのは知ってたから本当に戻れるまで何とかなるって。
でもその甘えは結果的には皆に迷惑掛けっぱなしで。
『どうして…何も覚えて無いんだろう』
はらはらと零れ落ちる涙はなかなか止まってはくれない。
「な…泣くなよチェリー」
「別に構いやしねぇよ。俺達はお前にいつも助けてもらってたんだ」
『そう…なの?』
「あぁ。だから気に病む事は無い。チェリー自身が助けを必要としてるなら俺達が助けになりたいだけだ」
『~っ』
頭を撫でてくれるその優しい沢山の手が愛しい。
「皆!朗報だよ!…ってえ!?チェリー泣かしたの!?」
バタバタと慌ただしく広間に入って来たシャルナークはその光景を見てギョッとして抱えていた書類を落とす。
「ちげーよ!で、何が朗報なんだよ」
「あ、うん。チェリーに懸賞金をかけた人物が分かったんだ」
と書類を皆に配る。
「名前はマリブ=キュラソー。有名な実業家だ」
「…コイツあの男か」
「そ。極一部の人間からは数多の人魚を虜にした、と言う噂があるみたいだけど…そこの真偽は分からない。拠点はこの三箇所だ」
書類の写真の男を見るその深紅の瞳は情熱的な色をしながら、とても冷めていた。
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