第7章 ニンギョ×ト×トウゾク
ずっと見ていたよ。
小さくなって記憶まで無くした曖昧な存在であるアタシをずっと守ってくれてたその広い背中達。頭を撫でてくれる暖かい手。抱き締めてくれる時に伝わる優しい胸の鼓動。
あぁ…幸せだなぁってずっと感じてた。
※※※
あれから…チェリーが幻影旅団に保護されてから一ヶ月が過ぎた。相変わらず記憶が戻る気配は無い。
先日の一件で旅団は手分けして、あの男の情報を探すが尻尾すら掴めないまま。そこで旅団は思考を変え、人魚の一部を売買してるオークションや闇市を巡ってみるが、どれも偽物…とチェリーは首を横に振る。
本物は眼球しか見た事が無いのだが眼球なんてそもそも売買してる様な代物では無く鱗や毛髪、爪などと言ったものは他の人間や魚と何が違うのかは皆には分からず八方塞がりな現状。
「…て訳なんだ♣︎」
「へぇー」
『んむ!』
お餅の様なほっぺたをつついてみたり伸ばしてみたりして遊ぶ。
「こんな綺麗な髪の毛と瞳を隠してたなんてズルいよなぁ」
ぎゅーっと挟むと変な顔になる。
『いゆみやめてぇ』
「あのつっけんどんな性格も何処へ行った事やら」
『むー!』
「ねぇウチに連れて帰っていい?」
「それは駄目だよぉ♤」
皆が可愛がってるから怒られちゃう、と続ける。
「ちぇっ…ヒソカは何?おもり?」
「皆には反対されちゃったんだけどねぇ♡」
くつくつと喉の奥で笑う。
あの一件の後から"元に戻りたい"と言うチェリーの助けになりたくて旅団の皆は少しでも手掛かりや情報を得ようと各地を回っており、狙われてる可能性のあるチェリーを手の空いてる者が護衛をする、と言う算段。
たまたま手の空いてたヒソカが名乗り出た訳だが猛反発を受けアジトは更に荒れ果てた訳だが。
「チェリーが僕と遊んでくれるって言うから♣︎」
「へぇ。で、俺もか」
よいしょ、と肩に乗せられると小さな手でイルミの髪の毛を触る。
『さらさら!ヒソカがちがち!』
「僕はちゃんとセットしてるもの♣︎」
「チェリー、何処行きたい?」
『うーんとね、あっち!』
と指差す方向はパンダの着ぐるみが風船を配ってる場所。
「うーん♤流石お兄ちゃんだねぇ♢子供の扱いはお手の物だ」