第6章 ニンギョ×ノ×キキ
「着ぐるみと言えばやっぱウサギ…だろうか?」
一同「………」
全員がドン引いたのは言うまでもない。
※※※
頬を撫でる風は冷たく息を吐けば白くなる。足場の悪い白い地面をサクサクと踏めば辿ってきた道の足跡が深く残る。
「さっむー!まるで北極だな」
「何でここだけ雪国になっちまってるんだ…」
「もう少し厚手の服買えば良かったかしら?チェリー寒くない?」
『ん?うーん…平気!』
ウヴォーに肩車されながら元気に手を上げる。
向かう先はチェリーの店、もといチェリーの家。
チェリーの家は丘の上に有り、周りは自然で囲まれていて他に家などの建物は無い。丘を下れば小さな町。その町に入った頃から雪が降り出し気温はどんどん下がり始め、丘に上って行くと積雪の地。
比較的暖かい地域で緑が綺麗な場所なのに、その欠片は最早見当たらず銀世界が広がる。
『あ!』
「どうしたか」
『お城が見える』
一同「城…?」
『氷のお城!』
※※※
「これは一体…」
「どーなってやがんだ…」
-ひゅぉぉおおお-
丘を登った五人の前に聳え立つは美しくも残酷な氷の城壁。
いくつもの氷の棘は何人もの人間を串刺しにし、氷漬けにされた人間も多数。その光景はまるで地獄絵図の様だった。
「いい光景ね。ワタシ好みよ」
「そうか?」
「チェリーの家は確かこの辺…」
「家ごと氷漬けになってるわ」
「敵の能力か?」
「いいえ………違うわ」
目の前の氷を興味有りげにペタペタと触るチェリーに視線を移す。
「チェリーの能力か?」
「恐らく。この死体達…薄らとしたチェリーの記憶に居たわ」
「これだけの人数の敵襲にあったというのか!?全員が能力者だったんだろ?」
「強敵を…こんなにも広範囲で圧倒する能力…」
ぺた、と氷に触れたフェイタンがふと眉根を寄せる。
「おかしいね。念、感じないよ」
「ホントだ」
「念じゃないって事か?」
『?』
一同「………」
皆を見上げるその純粋無垢な目が少し不安そうに揺れる。
※※※
一通り付近を調べるが異常気象の天候と聳え立つ氷の城壁、敵襲が事実だったと言う事しか分からないまま。