第6章 ニンギョ×ノ×キキ
手を伸ばせば優しく掴んでくれる。泣きそうになればぶっきらぼうに頭を撫でてくれる。怖がれば抱き締めてくれる。我儘言えば遊んでくれる。
殺人狂で盗賊で恐れられてるのに本当は皆、暖かい人達だとアタシは知ってるよ。
※※※
『…シズク?』
「うん、そうだよ。宜しくね、チェリーさん」
そう言って小さな手を握れば輝いた笑顔を向ける。
『シズク、好き!』
「有難う」
「僕は?」
『こるぴと!』
「…コルトピだよ………」
「私は?」
『ミイラ!』
「違うよチェリー、ボノレノフ」
『ぼの…ぼのれ………ボノ!』
あれから一日が経過。まだ少し傷痕や毒のダメージは残ってるものの人間とは思えない回復力で元気にはしゃぎ回る。
自分の名前や人の名前、ある程度の言葉の知識はあるものの、自分が今までどうやって生きてきた等の記憶は明らかに失っていた。
現にフェイタンやノブナガが"この刀はチェリーが作った"と言っても本人は"作れない、知らない"の一点張り。
「じゃあ今日、チェリーの家に行く人を決めようと思うんだけど…」
シャルナークがうーん、と首を捻りながら言葉を紡ぐ。
「情報担当の俺とパクノダ。後は…そうだな………もし本当に敵襲にあってたとしたら、まだ危険な可能性があるから戦闘員が2~3人欲しいかな」
「じゃあ俺とウヴォーだな」
「ワタシ、行くよ」
「じゃあこの五人で決定で」
『お出かけ?』
「うん、チェリーもね」
※※※
「あ!あたし買い物行ってくる」
シャルナーク達がチェリーを連れて出た30分後、マチが思い立った様に椅子から立ち上がる。
「買い物?」
「うん、チェリーの着るもの」
ここに子供服は無いでしょ、と続ける。
「多分パク達が数着買うと思うけど…一応」
「私も服、選びたいかも」
「じゃあ荷物は俺が持とう」
「俺達盗賊だぜ?買うなんて野暮な事…」
「チェリーは盗賊じゃないんだから盗品なんて着せられないだろ」
「お…おぅ…そう、だな?」
マチの剣幕にフィンクスは言葉を詰まらせる。
「どんなのがいいかな?着ぐるみとか似合いそうだよね」
「着ぐるみか…」
一同「団長?」