第4章 ニンギョ×ノ×ショウシツ
いつか必ず戻ると誓って大切なモノを手放した。
走って走って必死で走り抜けて。何故か途中で泳げたらいいのに、なんて考えたりしたけど理由なんて分からなくて。
これだけは手放したら駄目だと、その小さな身体に不釣り合いなモノを抱えて走った。そして辿り着いた先は…
※※※
夜が明ける少し前。自分が変な脂汗をかいてる気持ち悪さで目を覚ます。広範囲の円を使って神経を研ぎ澄ますけど特に何も変わりは無くて。
『気持ち悪…』
ノロノロとベットから起き上がると浴室を素通りして階段を降りる。階段裏にある地下への鉄扉を開ける。
『先に完成させちゃお…』
ペタペタと階段を降る足取りは重くまるで身体中に鉛でも付いてるんじゃないかってくらい身体は重い。
※※※
「目標地点までどのくらいだ?」
"後半径1㎞の地点を囲んでます"
「そうだ…そのまま慎重に行け。女帝の可能性が高い」
-ガシャン-
「おや?起きたのかい?マーミィ」
マーミィと呼ばれた女は吊し上げられた鎖を必死で鳴らす。
「貴方…死ぬわよ」
「はあ?」
-パシン-
と鞭がしなって女の身体に傷を増やす。
「げほっ…」
「アレだけ血反吐吐いてるのにまだ減らず口が叩けるのか…君も大したものだよ」
"目標まで500m"
「よし、封印部隊を行かせろ」
※※※
『刀身、重量、斬れ味…やっぱアタシ天才だわ』
誰に自慢する訳でも無く独り言として自我を称賛する。熱めのシャワーで汗を流してキュッと蛇口を締めた瞬間だった。
-ずずず…-
『!』
ドス黒い何かを感じて浴槽を飛び出す。それでもドス黒い何かはどんどん強まって行く事に危機感を覚え身体も拭かずロングローブだけを羽織り、商品である番傘だけを持って寝室の窓を蹴破って外に出る。
『1…10…30人』
何故こんなに近くにこれだけの人数の敵に気付かなかったのか…油断した自分に腹が立って舌打ちをする。
「能力を発動させた一瞬で気付くなんてお見事。ボスの想像通り一級品が掛かったようですね」
『用があるなら玄関からお願いしたかったんだけど?』
「生憎そんな常識は持ち合わせておりません」
『最低だわ』