《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第6章 温泉旅館でときめいて
霊幻さんは呆れ顔でため息をついた。
「はぁ……、おまえなぁ……。長いんだよ。鍵を持ってるくせに」
「鍵? ……あっ! そうだった!!」
すっかり忘れていた。
『先に出ると思うので、鍵は私が持ってますね』なんて言わなきゃよかった。しまったー!
「よっぽどじっくり浸かってたんだな」
「す、すみません……」
霊幻さん、どれぐらい待っててくれたんだろう。悪いことしちゃった。
「ま、いいけどな。ほら、部屋に行くぞ。おまえまで湯冷めしちまう」
霊幻さんは頬を緩めて手を差し出してくれる。
「え……怒ってないんですか?」
「ばっか。それぐらいで怒るわけないだろ」
よ、よかった……。
霊幻さんの手に手を重ねると、ギュッと握られた。
「っ……!」
大きい手に胸の奥が苦しくなる。
「ゆめ? どうした? もしかしてこれぐらいで照れてんのか?」
そんなこと言われても……普段あまり手を繋がないから慣れてないんだもん。
「照れちゃだめですか?」
「いや、むしろもっと照れた顔を見せてくれてもいいんだぞ?」
霊幻さんはニヤニヤしながら私の顔を覗き込んでくる。
「私は逆に霊幻さんのそういう顔が見たいです……」
「それは無理だな。感情が簡単に顔に出てたら商売にならん」
「むぅ……それはそうですけど」
私たちは歩き始めた。
たしかに霊幻さんは思っていることをあまり顔に出さない。『営業の極意は笑顔だ!』なんて言って、お客さんの前ではいつもニコニコしてるけど、普段はかなりのポーカーフェイスだ。
でも、私だって霊幻さんがデレデレフニャフニャしてるの見てみたいんだけどなぁ〜。
「おい、飲み物は買っていかなくてもいいか?」
霊幻さんが廊下の自販機コーナーを指差す。
「はい。大丈夫です」
このまま手を繋いでいたいし。
離されたら嫌だから、霊幻さんの指に自分の指を絡めて恋人繋ぎにしてみる。指と指がしっかりとハマって密着した。力を入れて握ると、霊幻さんもそれ以上の力で返してくれる。