《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第6章 温泉旅館でときめいて
でも本当のことを言ってスッキリしたいなんて、俺の身勝手な自己満足にすぎないのでは……。
迷いながら目の前の煮物椀に手を伸ばす。
そのとき、
「失礼いたします。デザートをお持ちしました」
突然、仲居の声がして襖が開いた。
デザート?
俺はお品書きを取った。
「メロンだろ? もう来てるよな?」
テーブルにはすでに一切れずつ置かれている。
「いえ、それとは別でございます」
「は? 別? 頼んでねぇぞ?」
戸惑う俺をよそに、向かいのゆめはニコニコとうなずいた。
「大丈夫です。お願いします」
「え、ゆめが頼んだのか? おいおい、まだ食う気かよ? おまえなぁ――」
仲居が大きめの皿を俺の前に置く。
洒落た抹茶ケーキときれいに盛られた色とりどりのフルーツ。その横にはアイスクリームまである。
あ???? なんだ、この洋風乙女ちっくな盛りつけは? というか、なんで俺の前に置いた?
マジマジと眺めると、ケーキに『Happy Birthday』と書かれたチョコプレートが乗っているのに気づいた。
「あっ……!」
ようやく合点がいった。
ゆめが「そうですよ〜!」とピースサインをする。
「俺の誕生日か!?」
「も〜! 霊幻さん、やっぱり今年も忘れてましたね!」
ゆめが頬を膨らませて可愛く睨んできた。
「去年も……忘れてたっけか?」
「忘れていたことを忘れちゃったんですか? それにもうひとつ大事なことがありますよ?」
もうひとつ大事なこと?
ゆめは自身を指差し、「ん! ん!」と何やらアピールしてくる。
「……?」
ゆめが? なんだ?
「ほら! 霊幻さん! 私! 私と!」
「おまえと?」
「誕生日といえば!?」
誕生日といえば……?
ふとピンクのネオンが頭に浮かんだ。
「あ……そういえば去年の誕生日も今年も『ギャランドゥ』に顔出さなかったな……」
「ブーー! 違います! 行きつけのバーは、私とは関係ないじゃないですか! 一年ですよ? 一年!」
ゆめが叫ぶ。
一年? ああ、そうか。
ゆめの言いたいことがやっとわかった。