《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第2章 サギ師のあなたに脱がされて
「でも……」
「うまくいってもいかなくてもスッキリはするだろ」
俺はスッキリしないけどな。
ゆめは困ったような顔をしながら、たこ焼きを食べる。そういえば今日は髪型も違うし、格好も改まってんな。
「ゆめ、このあとどこかに行くのか?」
「え?」
ゆめが不思議そうに首を傾げた。
「オシャレしてるだろ? メイクもいつもより濃いし。何かあるのか?」
「っ!!」
ゆめの顔が真っ赤になる。
ん? なんだ?
「どうした? あ、もしかしてその好きな男のところに行くのか?」
「ちっ、違いますっ! あ、違うというか、そのっ……」
やっぱり男のところに行くみたいだな。
「なんだ、長居させて悪かったな。急いでいるなら行っていいぞ。告白もついでにしてこいよ。頑張れ」
「っ……! わ、わかりました……」
ゆめは立ちあがると鞄を肩にかけた。
「お疲れ。気をつけて行けよ」
声をかけると、頷いて足早に出口に向かう。
「お疲れさまです……」
「おう、またな」
もう返事はなかった。勢いよくドアが閉まり、駆けていく足音。相談所はとたんに静寂に包まれた。
「なんだよ、そんなに急いでいたのか」
どうせ同じ大学の男だろ。悔しいが俺はもう27、大人だ。恋にがむしゃらになる年でもない。ゆめを渡さない、なんて言える立場でもないしな……。
「もう少し仕事していくか」
PCの電源を入れる。心霊写真の除霊を依頼されていたんだった。
もちろん、俺は除霊なんてできやしない。画像処理ソフトでささっときれいに霊を消す。心霊写真なんてものはほとんどが撮影者の思いこみだ。口で説明したところで納得はしないが、画像処理した写真を渡せば依頼者は晴ればれと相談所をあとにする。まあ、win-winってやつだ。最近は優秀なソフトがたくさん出ているしな。
写真をスキャナーにセットする。
淋しい? いや、俺は仕事をして充実している。幸い相談所も軌道に乗ってきた。詐欺とはいえ、依頼はきっちりと解決している。淋しいわけないだろ。淋しくなんか……。