《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第2章 サギ師のあなたに脱がされて
《霊幻side》
相談所につくと、依頼者の姿は消えていた。俺たちの帰りが遅すぎて、どうやらしびれを切らして帰ってしまったらしい。チッ、くだらない詐欺師のせいで仕事を逃してしまった。まあ、俺も詐欺師だが、ああいうクズな輩とは一緒にされたくないもんだ。
ゆめは呆然と部屋の入り口で立ちつくしている。自分のせいで依頼者が帰ったと責任を感じているんだろう。
「ゆめ、とりあえず座れよ。なんか食うか?」
努めて明るく言うと、ゆめはおずおずとソファに座った。
「すみません、霊幻さん。私のせいで仕事が……」
「気にすんな。依頼ならまた来るだろ」
「はい……」
俺は茶をいれ、さっき買ってきてそのままになっていたたこ焼きをテーブルに出した。
「今日はモブは部活で来ないからな。依頼ももう来ないだろうし、ゆっくり食べていけよ」
ゆめの向かいに座り、たこ焼きを口に放り込む。
ゆめも食べはじめた。
「霊幻さん、さっきはすごかったですね。まるで本物の詐欺師みたいでした!」
「…………。まあな……」
そりゃ詐欺師だからな。
「今度からは気をつけます……」
また思い出したのか目を潤ませるゆめ。
はぁ、まったく。放っておいたらまたすぐ引っかかりそうだな。心配だ。
「いいか、ゆめ。詐欺に引っかからないのも大切だが、根本を解決するのも必要だぞ?」
「根本?」
「好きな男と想いが通じないからブレスレットの誘惑に負けたんだ。はっきりすりゃいいんじゃないか? その男に告白でもしてみろよ」
俺は何を言ってるんだ。こんなもん勧めたら、ゆめがどっかの男に告白しちまうじゃねぇか。