《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第2章 サギ師のあなたに脱がされて
「おい、ちょっと待て! 慰謝料500万円って、詐欺じゃねぇか!!」
叫ぶ男を霊幻さんは静かに振り返った。
「ああ、そうだな、詐欺だ。おまえらがやってるのは、こういうことなんだよ。わかったか? 身に沁みただろ」
「っ……!!」
「この足で警察に行ってもいいんだぞ。壊れた安物のブレスレットを無理やり売りつけようとしやがって。捕まりたくなかったら大人しくしておくんだな。あんまり調子に乗ってると、おまえら悪霊に取り憑かれるぜ? おい、ゆめ、帰るぞ」
霊幻さんに手を引かれ、建物を出る。男たちは追ってはこなかった。
「早く戻るぞ。ったく、何やってんだよ。こんなのどう見ても詐欺だろ? ブレスレットなんか欲しかったのか?」
「い、いえ……」
私はちらりと手元を見た。
手、繋いだままだ……。
頬が熱くなってくる。
「少し前にもモブが同じ手口で壺を買わされそうになったんだ。どうせゆめも運が良くなるとか言われたんだろ? 女性相手なら『恋が叶う』とか『結婚できる』とかが詐欺の常套文句だな」
「っ!!」
図星だ。は、恥ずかしい……。
「なんだよ、早く結婚したいから引っかかったのか? まだ大学生だろ? それとも恋愛か?」
「そ、その……好きな人への想いが叶うって言われてつい……」
「…………」
霊幻さんがじっと私を見つめる。
「すみません……」
「いや、まあ次からは気をつけるんだな」
手が離れた。私の前を早足で歩いていく霊幻さん。
あれ? 誤解された? もしかして、好きな人がいるって言ったから気を使って手を離したの?
ズキンと胸が痛む。
私が好きなのは霊幻さんなのに……。
それに今日は特別な日だから、どうしても霊幻さんと過ごしたかった……。