《モブサイ》サギ師のあなたに脱がされて (霊幻/R18)
第2章 サギ師のあなたに脱がされて
「おい、にーちゃん! 彼氏か何か知らねぇが、この女が壊したブレスレットの弁償代500万円、きっちり耳揃えて払ってもらおうか?」
霊幻さんは床に散らばった石を一瞥した。
「へぇ。そこの安そ〜〜〜〜〜〜なブレスレットをうちのゆめが壊したってのか?」
ちょ、霊幻さん、煽らないで!
「ああ!? おまえ、喧嘩売ってんのか!? ちょっとツラ貸せや!!」
案の定、ご立腹。男が霊幻さんに迫る。
瞬間、
「痛っ!!!!」
霊幻さんが耳を押さえて蹲った。
「え?」
どうしたの!? 男に殴られたようには見えなかったけど……。
霊幻さんは急に苦しそうに床を転げまわった。
「耳元で大声出すから鼓膜が破れちゃったよぉー! いってえーーーー! これ治療費かかっちゃうよぉーー!」
「は……?」
男がぽかんとする。
霊幻さんはさっと立ちあがると、男に手を差しだした。
「耳の治療費、慰謝料込みで100万円」
「はぁ!? おまえ、何ふざけてんだっ!」
霊幻さんが今度は目を押さえる。
「あいててて! ブサイクすぎて見てたら目が腐った! 治療費、慰謝料込みで100万円」
「んだとぉお!!」
「声が汚い。精神的苦痛を負った。慰謝料100万円」
「おんどりゃいい加減にしろ!!」
「唾が飛んだ。スーツが汚れたからクリーニング代、慰謝料込みで100万円」
え、何これ……。
私も女性もぽかんとふたりのやり取りを眺めた。霊幻さんはまったく動じず男に慰謝料を請求しつづける。
「ゲホゲホッ! おまえが動いたから埃が舞った。喘息が悪化したから治療費、慰謝料込みで100万円。これで合わせて計500万円。ブレスレットの弁償代とチャラになったな。ほら行くぞ、ゆめ」
慌てて霊幻さんに駆け寄る。
本当にこのまま帰れるの!?