第9章 初戦
澤村「よし、全体的に後ろに下がれ。月島は少しサイドラインに寄れ」
月島「はい」
澤村「よし、来い!」
烏野はレシーブが得意な澤村がコートのほぼ真ん中に立ち守備範囲を広げる配置に変更した。
及川「ふーん、でもさ、一人で全部は守れないよ!」
烏野の守備位置が変っても及川の狙いは相変わらず月島だった。コートの端っこにいる月島目掛けピンポイントのジャンプサーブが炸裂する。しかし、コントロール重視の分、先程より威力は弱い。
及川のサーブを止めるにはこのチャンスを逃せない。月島は先程よりも若干威力の弱まったサーブを意地でレシーブ。しかし、高く上がったボールはそのまま敵コートへと返り、青葉城西のチャンスボールとなった。
及川「ほら、美味しい美味しいチャンスボールだ。きっちり決めろよお前ら」
落ちて来たボールを及川がレシーブし、2年生セッターの矢巾がトスを上げる。スパイクに跳んだのは金田一だった。
今の烏野は月島も影山も後衛で一番高さがないローテ―ションなので、スパイク態勢に入った金田一は完全にブロックは振り切れると安心していた。
空中にいる金田一の前に突然日向が現れた。日向は身長差を補う人並み外れた跳躍力でギリギリボールに触れる。これ で、ブロックは出来なくてもスパイクの威力を減らすことには成功した。今度は烏野にチャンスボール到来だ。
金田一「クソがっ! 今度は俺が叩き落としてやるよ!」
着地した金田一がネットの向こう側で叫ぶ。しかし、日向は着地と同時に素早く方向転換しレフトからライトへ全力で走り出していた。
金田一「ッ!」
慌てて日向を追い掛ける金田一。一方、影山は日向が着地と同時に走り出すのを視界の端で捉えていた。
判断は一瞬。全力疾走し全力跳躍する日向ではなく反対側にいた私に掌を向け影山が精密なトスを上げる。
影山(一瞬、一歩、日向に食いついた時点でもう後戻りできない)
私は空中で及川だけを凝視し影山の上げたボールをスイングした。
威圧感ある視線が真っ直ぐ及川を貫く。空中にいる私と目が合った及川はゾクリと背筋を震わせた。
「オラあぁっ!!」