第40章 虚無
昔の夢を見た
お母さんとお父さんと
3人でお祭りに行く夢だった
私はいちご飴が大好物で
それを買ってもらっている
楽しそうだなぁ
あの頃は何も考えずに
生きていたよね
あれ
お母さん?
お父さん?
段々と遠のいて行く
走っても走っても
追いつかない
置いていかないで
私を一人にしないで
「お母さん!お父さん!!!」
夢から覚めたのか、私は叫ぶように起き上がるも辺りは見覚えのない天井と壁が真っ白な場所にいた。
「ここ……私……」
ズキンと痛む頭を抑えれば、何があったのか思い出そうと記憶を辿る
「起きた…か?」
ギィイっと少し古びた扉が開けば、見覚えのあるシルエットが見えてきた
「クロ……?」
泣いたのだろうか、目の端が少し赤くなっている事に私は気付いた
黒尾「起きたか………よかった」
そう言った黒尾の口元がゆるりと緩まれば一瞬ふっと笑うも、私の背中に長い手を回しそっと私を抱きしめるもその手は少しだけ震えていた