第38章 満月
「んっ…zz(あれ…誰かに抱きしめられてる?夢…かな…)……」
体が一瞬フワッと浮き上がりその後何かにぎゅっと抱きしめられているような感覚があった、何か懐かしい小さい頃お母さんに抱っこされているような、優しい肌触りがあった
「グスッ……お母…さん…」
涙が頬を伝い、夢うつつそう呟けば
「俺はあなたの母親じゃないですよ…まぁ、"母親みたい"とはよく言われますけどね…」
「んっ…だ…れ?」
頭の上から声が聞こえてくれば目をうっすら開けて顔を見上げる
「起きましたか?」
「……赤葦さん!?」
雲に隠れていた月が顔を出せば、その光で顔を照らし誰が自分を抱きしめているのか見えてくる
赤葦「全く、木兎さんといい あなたといい、世話がやける人が多いですね俺の周りには」
その顔は呆れたようで、でもどこかホッとしている顔だった
「あっ、ごめんなさい赤葦さん!今降りま———」
赤葦「動かない方がいい、足、怪我してるみたいなんで」
降りようとした途端、赤葦は更にギュッと抱き上げるも歩くのを辞めず
「ごめん…なさい……」
泣きそうになっている私の顔を見た赤葦は、小さくため息をしては近くにあったベンチへと座らせる
赤葦「……なんであんなとこに1人でいたんですか?」
私をベンチへと座らせた後、赤葦は目の前で膝をつき目線を合わせるようにしゃがむ
「あっ、えっと……」
説明するのを躊躇うも、赤葦がじっとこちらを見つめているため目を離せず
「あっ、木兎さん!!…忘れてた、私、無我夢中で走り続けて…木兎さんのこと置いてきちゃった!…っ……いったーー…」
木兎を置いてきたことを思い出したのかその場で勢いよく立ち上がるも、指を怪我しているためふたたび座る
赤葦「ほら、だから怪我してるって言ったでしょう、とりあえず今は座って……それと、木兎さんなら大丈夫ですよ、電話で連絡あったので…(この人、何か一つのことに集中すると、他のことが見えなくなるのか…まるで木兎さん2号だな…)」