第29章 進化
歩き出した私の手を掴んで止める影山
「話したくない!!やめて!!」
泣きそうになる私、涙を堪えて影山の手を払えば再び歩き出す
影山「チッ……」
すると影山は何かが影山の中で吹っ切れたように私を後ろから抱きしめる
「え?!と、飛雄?!?!」
思いもよらない影山の行動に私はあたふたして影山の名前を呼ぶも後ろを振り向かず影山はそのまま話をしだす
影山「お前……逃げんなよ、目を背けんな、現実から…」
「ッ………」
影山の言葉に勝手に涙がポタポタと出てくると、影山はそっと抱きしめる手を緩め、私の手を掴んで近くにある公園のベンチに座らせる
影山「お前のここに、つっかかってるモヤモヤはなんだなんだよ……」
ベンチに座らせた私の前に小さく屈みこんだ影山は私の心に手を当てる
「昔—————
影山の真剣な顔を見た私は重い口を開き、昔あったことを話し始める
———————昔、私が世界ユース女子のエースになりたてのころ両親と喧嘩してね。家を飛び出したの、エースになりたてで、うまく自分の思うバレーができなくてさ、そして、一人で夜道を歩いてた時、後ろから大きなトラックが走ってくるの私気付かなくて、むしゃくしゃして多分周り何も見えてなかったんだと思う……
私がトラックにひかれそうになった時、追いかけてきた両親が私を守ってくれてさっ—————
————————両親は即死だったって……私を突き飛ばして身代わりになってくれた、私は軽い膝の怪我だったからすぐ直ると思ってたんだけど
しばらくして世界大会が始まった、両親が亡くなった事、もちろん、私の膝の怪我が治ってないこともメンバーには伝えてなかった
私がエースだったから、みんなに迷惑かけたくなくて……
私がこんなんだから、治っていた病気もまた再発しちゃって咳が出始めてた
タイミング悪いよね…初エースで世界大会の時にこんなボロボロなんて……
運良く、決勝戦まで行ったんだ、今までの試合、ほとんどストレート勝ちでなんとか症状も重くならないままで
でも決勝戦、まさかの5セットマッチの5セット目まで行っちゃって
私の膝と肺はかなりの悲鳴をあげていたと思う