第1章 【Dtm】Feel
と過ごすようになって一ヶ月が経った。
共にいる時間はそこまで長いわけじゃないのに、彼女は俺にとって無くてはならない存在になっている。
初めは償いのつもりだった。
それがいつの間にか、彼女の笑顔に救われる立場になっていて。与えられてばかりで何にもしてやれてないことにもどかしさを感じていた。
だから、が俺に特訓を持ちかけてきた時、嬉しかった。やっと力になれると思った。他の奴らよりも信用されているってことに優越感を覚えたのも確かだ。
改めて触れたの肌は滑らかで柔らかく、彼女が肩を揺らす度現れるベールのような綿もまた綺麗だと思った。
は緊張した面持ちで微笑む。色づいた頬に触れてしまいそうになって、彼女の小さな声で我に返った。
「つらくないか」
「んっだいじょぶ」
声を出さないようにか口元を押さえる。彼女の顔は真っ赤になっていてその表情に心臓が大きく跳ねた。
手を取ってなるべく怖がらせないようにと慎重に触れる。
綿越しじゃないそのままの感触が新鮮で、確かめるように反対の手に指を絡めた。こうしてみるとの手は随分小さく感じた。
怖いのか時折きゅ、と強く手を握り返してくる。
手首や腕は特に顕著に反応している。あの時の事を思い出すと後悔と怒りで喉が焼けそうになる。だから彼女の前では思い出さないようにしていた。
は人の感情の機微に敏感だ。俺がマイナスな感情を抱えてると悲しくても笑ってみせるし、それについて深く追求しないから、一人で思い悩んでいるのではと心配になる。
いっそ全て話してしまおうかと思ったが、警察に口止めされているのを思い出し踏みとどまった。はショックから事件のことをあまり覚えていない。彼女が望むまでは黙っていて欲しいと言われた。
被害を受けた時、そこには犯人としかいなかった。深く知り、乗り越えるためにはやっぱりが思い出すしかねぇと思う。