第2章 【Dtm】Baby
休み明け、平和に始まった朝のホームルーム。相澤先生は短い挨拶を終えると、を名指しして
「お前ヴィランに襲われたんだって?個性使わなかったのはいいが、すぐ暴走すんだから無茶するな」
と言った。即座に騒めくクラスメイト達。
皆が一斉に心配したり、詳細を求めたり矢継ぎ早に質問をすると、相澤先生がホームルーム中だと静め、この話題は休み時間に持ち越された。
は困った顔で俺に目配せする。彼女が言いたいのはどうしようとか、言わないでねとかそんなところだろう。
声を出さずに、がんばれ、と口を動かすと困った顔のまま笑って頷いた。
その後の授業で毎時間、先生方に「ヴィランに子供にされちまったんだって?」「轟少年も少女の家で面倒を見たそうじゃないか!」──なんて爆弾を投下され続けたは昼休みになる頃には机に突っ伏して撃沈していた。
そんなに少し同情して話しかけると周りにいた女子がにやつきながら教室を出て行った。
「轟くんよ、あらぬ誤解されまくってるのに来てしまっていいのか……」
「口調おかしいぞ。あながち間違いでもないだろ」
「いや、間違いです。お付き合いしてないし……」
「“すき”って言ってただろ」
耳元で囁くと勢いよく顔を上げて俺の顔を凝視する。かと思えば、真っ赤に茹だってそれを隠すように腕で蓋をする。しかし隙間から見える頬はやはり紅潮したままで俺は思わず笑みを零した。
「あれは!そんなんじゃないんだよ!!」
「ああ。悪ィ、わかってて言った」
「っもー!轟くんいじわるだ!」
普段大人しいが動揺して大騒ぎするのは見てて面白いからついからかってしまった。あまり反省しないままに謝ると、わあわあ声を上げながら教室の扉目掛けて走り出す。
出ていくのかと思ったら扉の前で立ち止まり、ちらりと俺を振り返っては絞り出すように轟くんのせいで一緒に食べる人いない……と呟いた。
そんな仕草に大きいも可愛いなと思いながら、共に教室を出て食堂へ向かうのだった。
end.