第10章 振りむいてよサファイア【O×S】
「…星が見えます…」
「うん…綺麗だね…でさ。敬語~?」
「あ…ごめん…」
同棲を始めた翔と俺は、当たり前だけど、四六時中いつも一緒な訳で。
大学では俺が教授で翔は助手だから、まあ、当然俺には敬語な訳で、家でも半分は敬語…
でもそれも何だか俺たちらしくて、実は気に入ってるんだ。
普段は『おかわりどうですか?』とか言ってる彼が、ベッドでは『早くちょうだい』な~んてさ( *´艸`)
そのギャップが堪らんのよ~
「智…何考えてたの?」
「え?いや…別に~♪」
「ふ~ん…」
「なんだよ」
「なんか、やらしいこと、考えてたみたい…」
「な、なんで?」
「鼻の下、伸びてたもん(-"-)」
すっ、鋭い…
ほら。ご飯食べに行こうよ、って翔が俺の手を引いた。
こんな毎日が、堪らなく愛しい…
翔がいて、
愛すべき苔たちに囲まれて、
あ、
でも、ごめんよ~、お前たち…
今はさ、翔が一番なんだ。
翔は、自分は苔の次でいいんです!
何て言ってるけど。
ホントは翔が隣に居てくれてこその研究なんだ。
そんなこと、口が裂けても言えないけどね(^^;
翔が悲しむのが目に見えてるから。
『俺が、大野教授の邪魔しちゃってるんですか?』
なんてね…
どんどん邪魔していいんだけど。
「…翔!!」
「?」
「愛してるよ」
「…俺も、です…」
俺たちは、手を繋いで温室を出た。
この間、高校で講演会をしたときに子ども達と作ったふたつの苔玉が、俺たちを見送っていた。
【 END 】