第10章 振りむいてよサファイア【O×S】
少しでも近くで見たくて、岩に両手をついて覗き込んだ
すると、俺が入り口を顔で塞いだせいで、中がさらに暗くなってしまい…
苔の美しいエレラルド色が薄らいだ
そうなんだ
この苔は『光苔』という名がついているけど、自分で発光している訳じゃなくて、
原糸体のレンズ状細胞が暗所に入ってくる僅かな光を反射することによって美しく光るんだ
レンズ状細胞には葉緑体が多量にあるため、反射光はエメラルド色になる
自然の神秘そのものだ
……あああ、綺麗だな~
触れてみたい…
でも、それは出来ない…写真を撮ったとしても、
あの美しさは半減してしまう…
それに…
もう少しだけ…と身を乗り出したところで、
「大野さん!!」
不意に翔くんが背中からTシャツを引っ張った
あ……翔くんの存在…
少しだけ…忘れてた(*´з`)
翔くん…ごめん…
「落ちますよ!全く…それに…」
それに…?
全く、それに…なんだろう??
まさか、エメラルドに輝く苔に見惚れて
恋人のことを、すっかり忘れてたってこと、バレた訳じゃ…
首を傾げる俺に、翔くんはパッと赤くなって、
「ズボンが下がってて…お、お尻が…」
えっ!?
慌てて腰に手をやると、携帯をポケットに入れたまま走って、そのまま光苔の生息する穴を覗き込んだせいで、
ズボンがずり下がっていた
これじゃ、背中を丸めてしゃがみ込めば、ケツの割れ目がバッチリ見えちゃってたはずだ…
首筋までほのかにピンクに染めて目を反らせた翔くんに、
俺の気持ちは、一気に愛しの恋人に向いた
さっきまで、忘れてたことは、
これで帳消しだ!!
「ごめんね、変なもの見せちゃって…」
「変なものなんて!!
……ただ、後ろを通る観光客にも、見えちゃってて…」
……そっか。
いい年したおじさんが、子どもみたいに岩の間を覗き込み、その結果ケツを出すって…
そりゃないわなぁ~(*´ω`)