第10章 振りむいてよサファイア【O×S】
「…え?………あ、あれっ?」
部屋の空気に散ってしまった言葉を
なんとかかき集めようとしたけど
もう…戻せなくて…っ…
「いやっ…あ、あの俺……え、っと……」
急いで大野さんの手を離して立ち上がる。
チラリと見下ろすと
大野さんの口は開きっぱなしで
ア、アゴ…外れそう…
いやいや、そんなこと考えてる場合じゃないっ!
大野さんが俺の話を聞こうとしてくれなくて
なんだか諦めちゃってるみたいで
誤解が解けそうもないことにジレちゃって…
気持ち悪いとか拒絶するとかありえないから!
ってことを何とかわかって欲しくて…
どうしてもそれを伝えたくて……
………それで?
それで、俺…何を言ったんだ…っ?
「ココココーヒー!なかなか美味しかったですね!
自分で言うのもなんですけどっ…あはっ、あははっ…」
乾いた笑い声が虚しく木霊したところで
背中がスウッとしたのがわかった。
大野さんは自分がゲイだと言っただけで
俺のことが好きだとはひと言も言ってないのに!
何を…先走ってんだ…(*゚◇゚)…
とりあえず…逃げなきゃ!
「カップは明日洗うので!
そのままにしといてくださいね!
お、おやすみなさ~い…っ…」
最後のほうはもう大野さんに背中を向けて
急ぎ足になってた……だって……
逃げなくちゃ!
自室のドアを開けて飛び込んで
後ろ手に勢いよく閉めようとしたら
「いででででっ!」
悲痛な声が飛んできた。
「へっ?」
振り向くと
10cmくらいのドアの隙間から
大野さんのしかめっ面が見えている。
…えっ?
と、飛んできたの?
こんな素早い動きをする大野さん
見たことない…(◎-◎;)
「足!…あしあしあしあし!」
人差し指がちょいちょいと下を指すから
その先をたどると
閉まりかかったドアに
大野さんの素足がガッチリ挟まっている。
「わぁぁっ!すみません!」