第10章 振りむいてよサファイア【O×S】
翔くんの大きなキャリーケースの上に、俺の小振りのボストンバックは、ちょこんと乗っかっている
その結果、俺は手ぶらで翔くんがガラガラと押して歩くケースの横に、並んで歩いている
「軽井沢でも…まだ暑いね…」
「そうですね~、大野さん、日中は都心とそんなに変わらないみたいですね~」
「そっか…夜は涼しくなればありがたいけど…」
「このまま一旦ホテルに入りましょう」
「うん…翔くんの荷物、落ち着かせないとね♪」
「え?い、いえ、どこか寄りたいとこあるなら、全然いいですよ~俺、こんなの慣れてるんで(^-^)」
いやいや…無理でしょ…
コーヒーショップ寄っても、嫌がられるって!
人が中に隠れてるようなそのキャリーケースじゃ。
駅前でタクシーに乗った俺は、ホテルの名前を告げた
たった5分乗ってたどり着いたホテルは、森の中にある高級ホテル…学会の勉強会が行われる場所だ
入り口で名前を告げると、学会の関係者ということでチェックインする必要はなく、迎えが来るまでしばし待つことに…
「素敵なホテルですね~」
キョロキョロする翔くんは、さしずめどんぐりを探すリス…
いや、リスより可愛いかも♡
「軽井沢は、初めて~?」
「はい、あ、いえ。こういうホテルに泊まるのは初めてで…」
「へぇ~、今まではどんなホテルに泊まってたの?」
俺だって、『The.リゾート』っていう感じのここに来たときは感動したんだから、翔くんもきっと…
「いつもは別荘なので、ホテルには縁が無かったんで、新鮮です」
別荘…?
そっか……(;´_ゝ`)
彼、筋金入りのお坊ちゃまだったっけ
「でも、ホテル、いいですね~♪
大野さんと一緒だし…楽しみです♡」
高原に負けない、爽やかsmileでそう言いきった翔くんを、俺は黙って見つめた
いや、見惚れた…かな?
『一緒で楽しみ』の後につけた、ハート♡に深い意味……
…な訳、ないか…(-_-;)