第10章 振りむいてよサファイア【O×S】
電車がゆっくりと滑り出す。
「大野さん」
また一人で『苔の世界』に入ってしまう前に
急いで声をかけて
「お昼にしましょっか♪」
さっきホームで買った駅弁の袋を
チョイっと持ち上げてみた。
「え…もう(◎-◎;)?」
驚く大野さんは無視してテーブルを出し
そこに駅弁をふたつ並べて置く。
「好きなほうをどうぞ♪」
「え~…鶏めし弁当と…なにこれ、海苔のり弁当?」
「ふたつとも俺の好きなの買ったんで…どちらでも♪」
興味深そうにふたつを見比べてる横顔が
もう…しゃぶりつきたくなるくらいにキュート♡
「ホントに~?…じゃあ…ねぇ~…」
あっち、だな…(*^^*)
両方とも大野さんの好きそうな
素朴なヤツを買ってきたんだけど
あっち…だと思うww
「これにする!」
俺の予想通り
海苔のり弁当を嬉しそうに持ち上げて
大野さんはまたほにゃ…と笑った。
くぅぅ~~(//∇//)たまんない♡
鳥肌が立ちそうなほど
好きな気持ちが溢れてきて止まらないのに
「はーい(*^^*)じゃ俺はこっち♪」
そんなオーラは笑顔の下に封じ込めて
落ち着いて自分の弁当の包み紙を開けた。
「おっ、すげ…佃煮とかおかかとか層になってる!」
もむもむと口を動かしながら
嬉しそうにご飯の断面を見せてくる大野さん…
さっきホームの売店で。
いや、もっと言うと昨日の夜
弁当のネット検索してたベッドの上で
思い描いていた通りの、その笑顔(〃艸〃)♡
叶わない、届かない…と知りつつ
これからも俺はこうやって
アナタの隣りで
アナタの笑顔を見守り続けていきたい…
そう思ってます(っω<`。)
「…ぐっ、ごふっ…」
「あ~…もう、だいじょぶですか?…はい、お茶!」
俺が差し出したお茶を
慌てて流し込むおじさんぽい仕草も
「ありがと…おかかが変なとこ入っちゃってww」
ペットボトルのフタを締めながら
照れくさそうに笑う顔にできる目尻のシワも
誰も…
可愛いって気づきませんように(>ω<〃)。
食事が終わると
秒で『苔の世界』に行ってしまった
大野さんの少年みたいな横顔を見つめて
俺は…
切なく揺れる胸を
小さなため息と共にほっこりと抱きしめた。