第10章 振りむいてよサファイア【O×S】
そこからの俺の行動は早かった。
そこそこの時間とエネルギーを費やして
それまで研究してきた蜂への思いは
かなり簡単に振り切ることができた。
あの人と一緒に研究がしたい!
もう俺の気持ちはその時点で
大野さんの元に飛んでいたから
研究室の教授に辞める旨を伝えることにも
ほとんど躊躇はなかった。
辞めるなとうるさく引き留める准教授も
軽くいなして蹴散らしてきた。
心残りがあるとしたら…
それは蜂への謝罪、かな(^ー^;)
中途半端なところで投げ出してごめん…
決してお前たちのことを嫌いになった訳では…
…っていう( *^艸^)。
そのあとは
集められる全ての彼の文献や論文を
手に入れ、読み漁り、頭の中に叩き込んで
同時に苔についても猛勉強した。
生半可な気持ちじゃないことを伝えるんだから
かじっただけの知識なんかじゃ許されない!
という思いで…
いま思えば
俺はもう、あの時から……(〃艸〃)くふ♡
できるだけの準備をして
初めて大野さんに連絡をとったのは
桜の花も満開を過ぎた4月の初旬。
履歴書を携えて研究室を訪ね
初めて大野さんに会った日のことは
俺は一生忘れないだろうと思う。
まずは…
ちっちゃ(*゚∀゚*)♡
口下手っぽくて
話す言葉は舌っ足らず。
なに、この人…
かわいい(〃ノωノ)♡
そんで着てるものとか髪の毛とか
自分のことは全然かまわなくて
とにかく苔第一なんだな、って…
そんな自分の世界を持ってる人には
俺みたいな経歴の持ち主なんか胡散臭いかな…
『蜂のとこに帰れ』って言われるかな…
…そういう覚悟をしたんだけど。
「いつから来られる~?」
履歴書にはざっと目を通しただけで
大野さんはすぐに顔を上げて
ほにゃ…って…(*゚∀゚*)♡
とんでもなく可愛い顔で微笑んだんだ。
「お客さん、どっち側につけます?」
タクシーの運転手さんの声で
飛ばしていた魂がゆっくり戻ってきた。
あぁ~…もう東京駅に着くのか♪
「あ、じゃあ…八重洲中央口で」