第9章 つんでれアクアマリン【A×O】
【SHO】
店の鍵を開けようとして、すでに開いていることに驚いた俺は、そのまま中に入った
「…ニノ…」
「あ、おはようございます、翔さん」
「ニノ…何でこんな早く~?」
「俺が早く来てちゃいけないですか~?」
「いや…そんなこと、ないけど…」
ニノは笑って、開店の準備を続けた
出掛ける前に、相葉ちゃんから電話があって、
智がまだ眠っているから、少し遅くなってもいいか?って…
眠ってるって…
全く。
夕べどんだけ疲れたんだよ…
「いいよ~、午前中休んでいいから、ゆっくり休ませてから寄こしてよ…」
そう言うと、相葉ちゃんは大袈裟に礼を言って電話を切った
「はあぁ~」
「何ため息ついてるんですか?」
「えっ?いや…」
ニノは可笑しそうに笑っている
いけねぇ~…うっかりため息ついちゃった
昨日、智の仕事を早く切り上げさせて、彼とのデートに送ったのは、他ならぬ自分なのに…
何を、今になって……
「翔さん、こっち終わりました!」
「おお、ありがと…じゃ、鉢に水やってくれる?」
「了解で~す♪」
………そう。
俺は智が好きだった
智が、俺のことを、好いていてくれるのも、何となく分かっていた
だけど……
なんだろうな~?
智がゲイだって知ってるがゆえに、俺…逆に尻込みしたんだ
『男同士』に、偏見はないけど、自分が…ってなると、妙に臆病になっちゃって…
智の気持ちに気付かない振りをしていた
でも、
『好き』……だったんだと思う
俺の中で、男女の仲というよりは、
穢してはいけない、守るべき大切な存在…
上手く言えないけど、そんなことだったのかもしれない…
あっという間に、相葉ちゃんに持ってかれちゃったけどな。
「翔さん…コーヒー入れました」
ぼんやりと顧客のファイルを眺める俺に、
ニノが声をかけてきた