第8章 麗しのタンザナイト【M×O】
「まさきっ///」
急に振り返ったニノくんが、またこっちに向かって真っ直ぐに走って来た。
正確に言うなら、雅紀くんに向かって…
「雅紀っ!!」
迷うことなく全速で走り寄ったニノくんは
そのままの勢いで雅紀くんに飛び付いた。
その小さな身体をガッチリ受け止めて
雅紀くんもまた、ニノくんをしっかりと抱きしめた。
そしてそのまま、ニノくんは、
雅紀くんにキスをした
「えっ///」
驚いて思わず小さく叫んだ俺の手を
智がさっきよりも強く握った。
なんだか、そこだけが、映画のワンシーンを観ているような…そんな錯覚を覚えるくらい……
その光景は美しかった。
「じゃあね」
雅紀くんから離れて、ニノくんはそう笑った。
「じゃあ…」
雅紀くんも笑った。
そのまま翔さんの元に走って行ったニノくんは、翔さんに腕を絡めて、また歩き出した。
エスカレーターの手前で振り返り、こっちに向かって、
「バイバ~ッイ///」
と大きな声で腕を大きく振った。
その直ぐ後、二人の姿は見えなくなった。
……………
………
暫くその場から動き出せない俺たち3人。
雅紀くんのことだから、きっと泣いてるんじゃないかと思って、怖くて顔を見れなかったんだ。
すると、
「よし!帰ろうっか」
思いがけない元気な声に、驚いて雅紀くんを見ると、いつもと変わらない笑顔だった。
雅紀くん……
その笑顔は、雅紀くんが泣くのを我慢しているようには見えなかった。
運転する俺も、助手席の智も、
後部座席の雅紀くんも、
みんな何となく黙っていて…
決して嫌な沈黙じゃないんだけど、
きっとそれぞれが、それぞれの心の中で、
ニノくんにお別れをしているんだろう。
そう思った俺は、
ほんの少しだけ、
オーディオのボリュームを上げた。