第8章 麗しのタンザナイト【M×O】
「いつ告白しようか?次に会ったら…次のバイトで…
って、そう思いながら、でもなかなか言えなかったんだ…
そんな俺の気持ちに、ニノが気付かない訳ないよね?
バイト帰り、ラーメン食べて行こうって誘われて…
ニノからそんなこと言われるの初めてだったから、俺嬉しくて!
食べ終わったら、帰りに打ち明けよう…
『好きだ』って言おう…そう決心してた…なのに」
ニノくんは、黙って雅紀くんの横顔を見つめている。
その目は……
俺の勘違いじゃなければ、ただのバイト仲間を見る目じゃない…よな…?
「…でも、それは出来なかった。」
「どうして?…ですか?」
思わず聞いてしまった。
そこまで決心してたのに、なんで?
「店を出たところに車が止まっていて…
それが、翔さんだった…ニノを迎えに来たんだ」
ニノくんは、雅紀くんを振り向きもしないで車の前に立つ翔さんへと駆け寄って、
そして抱きついてキスをした。
翔さんはそんなニノくんの腰を抱き、
優しい笑顔で何か話して、
そのまま助手席にニノくんを乗せた。
「彼は運転席に乗る前に俺を見て、軽く会釈した…
そしてそのまま、二人を乗せた高級外車は、
夜の街に消えた…
告白することも無く、玉砕した瞬間だよ…」
自嘲気味に笑う雅紀くんを、智さんもじっと見つめている。
……もしかしてさ。
ニノくん、雅紀くんの気持ちに気付いてた?
それで、告白させなかった…
自分は、雅紀くんの気持ちに応えることは出来ないから…
残酷なようだけど、彼なりの優しさ…
「翔は、俺の恩人だから…」
雅紀くんの話が途切れたのを待っていたかのように、
ニノくんが話しだした。
「信じていた恋人に全財産持ち逃げされて、多額の借金を背負った俺は…死のうと思ってた…
駅のホームで、次の電車が来たら…って…そう覚悟して…
飛び込もうとした瞬間、俺の腕を強く引いたヤツがいて…それが翔だった…」