第8章 麗しのタンザナイト【M×O】
「今日のところは、ってことならさ…
むしろこのまま泊まっていったら?
俺の仕事こんなんだから出勤もしないし(*^^*)。
明日一緒にゆっくり考えたらいいんじゃない?」
引き留めたいという迸る気持ちを抑えつつ
なんとか…
なんとか思いとどまって欲しくて
ついつい詰めるような言い方になっていく。
「求人募集に細かく説明してなかったから
いや、まぁ…説明できる内容じゃないからw
驚かせちゃったかもしれないけど…
俺の仕事のことは一切気にしなくていいから!
家の事だけしてくれてたらいいから!
あの部屋のことが気になっちゃうなら
すぐに…明日にでも防音工事を入れるから!
だから……だからっ………行かないで…っ?」
な、何言ってんのっ?俺……
これじゃまるで…
告白みたいじゃんっ(*゚∀゚*)!
「あ、あの…っ…智さん…?」
戸惑うような顔をしながらも
ニコッと微笑んでくれて。
「ちゃんとまた…来ますから(〃▽〃)」
「ちゃんと、って…いつ?」
「明日、です…♪」
「ホントに?…明日のいつ?」
「ん~~…朝ごはんを作りに」
「………」
そんなこと言って…
このまま戻ってこないことだって
ジューブンありうるよね…?
でも…
話しながらさりげなく移動して
玄関まで来てしまった俺たち…
靴を履いて振り向いた潤くんは
まだ少し頬が赤らんでいて
瞳も…ゆらゆら潤んでいて。
心が揺れ動いて
取り繕ってる感が滲みまくってるんだけど…
でも俺には
ここまで食い下がったことが奇跡に近くて
自分でも驚いてるくらいのもんで……
LINE交換しよ?とか
合鍵を渡しておくね?とか
それ以上強気なことは
どうしても言い出せなかった。
「それじゃ…」
潤くんが可愛く
ペコリとお辞儀をした。
「今日は採用いただいてありがとうございました」
「…うん」
「また…明日」
「…うん」
「おやすみなさい」
「………う、ん」
パタンと閉まったドアを見つめたまま
俺はしばらくの間
全く動けないでいたんだ。