第7章 悶々ガーネット【N×S】
【ニノ】
「……んんっ……」
「翔ちゃん!」
「…………ニ…ノ?」
「翔ちゃん、大丈夫?」
よかった、気がついた!
生徒が打ったスマッシュボールを
もろに顔面で受けた翔ちゃんは、
そのまま後ろに倒れて気を失った。
あたふたする俺の横に現れた岡田くんが
ひょいと翔ちゃんを抱き上げて、
そのまま保健室に向かった。
女子部員がキャーッ、と騒ぐのを気にもせず、
岡田くんはたくましい腕で、
がっちりと翔ちゃんの身体を抱えてる。
………(-_-;)
俺じゃ、無理だよ……
分かってるさ…
分かってるけど、なんか負けた気がする。
「ニノ、一緒に来て!」
「あ、は、はい!」
この光景を端から観たら、俺はさしずめ、
お姫様を抱き上げた王子様の後ろから
ちょこちょこついてく家来だな…(*´з`)
………からの、カーテンで仕切られた
二人だけの空間…
岡田くんは、
『軽い脳震盪だろうからすぐ気が付くよ』
そう言って練習に帰って行ったのに
なかなか目覚めないからさ、
毒りんごで眠ってた白雪姫がそうだったように
俺は眠る翔ちゃんにそっと口づけた。
そしたらホントに目が覚めた。
嘘だろっ!?
大きなどんぐりみたいな目を開けた翔ちゃんは
真っ直ぐに俺を見ている。
「どっか痛いの?」
「……痛い…つか、俺どうしたんだっけ?」
え~っ??
転んだ拍子に頭打ったとか?
「テニスボールが顔に…」
「ああああ!!思い出した!
俺ちょっと考え事してて、ぼんやりして…」
「考え事?」
俺の質問に、翔ちゃんはみるみる真っ赤になった。
「いや、いいんだ…忘れちゃったから…」
赤くなった翔ちゃんは、
気まずそうに眼を反らした。
………ホントにさ。
何て可愛いんだろ?
惚れた弱みじゃなくても、
きっと俺じゃなくても、
この人のこと、みんなが可愛いって思うだろう。