第6章 青春のシトリン【N×S】
【ニノ】
「おかえりなさぁ〜い♪」
大急ぎで、
だけど慌ててない振りをしてドアを開けると、
どんぐりおめめをパチクリして、
愛しい人が立っていた。
「どうぞ~」
「………(゜゜;)」
んんっ?
何で固まってるのかな?
「……しょう、ちゃん?」
どうしたんだろうと名前を呼ぶと、
はっと我に返ったような翔ちゃん。
「た、ただいまぁ〜?」
少し裏返った声でそう言って、
バタバタと靴を脱いで、
俺の横をすり抜けて行った。
え?
なに?
ただいまって……
………………あ……(;・∀・)
俺が『おかえり』って言ったからか〜
だからそれを受けての『ただいま』
なんだ………な〜んだ(^_^;)
翔ちゃんの『ただいま』に
上がってしまった心拍数を
喉の奥に力を入れてグッと抑えた。
「早かったね~」
「え、そう?早過ぎたかな?」
そんなことないよ、と笑うと、翔ちゃんは、
俺がさっさと帰ってしまった、とか、
初めての部活の感想を聞きたかったのに、とか、
ジャケットを脱ぎながらぶつぶつ言っていた。
「ふふふ…」
そんな翔ちゃんが可愛くて、思わず笑うと、
「何だよ~?行ってはみたけどやっぱり無理です、なんて言われたらどうしようかって…」
「楽しかったよ」
少し拗ねたような翔ちゃんに笑顔のままそう言うと、翔ちゃんはパッと瞳を輝かせた。
俺は、そんな彼を横目で見ながら、
豚ロースをひっくり返した。
この人の、こういう素直な顔が大好きなんだよね~。
いい大人なのにさ、ちっとも変わらない…
感情がそのまま、パッと顔にでるとこ…
そんな素直な反応、俺にはできないからさ~…
「よかった!それ聞いて安心したよ~」
狭いキッチンに入って来て
隣にくっ付いてくるから、
せっかく静まった心臓が、また跳ねた。