第6章 青春のシトリン【N×S】
翔ちゃんが買って来てくれた弁当は、
大学の頃、ふたりで食べてた弁当よりも、ちょっと高級で………
焼き肉弁当が、
幕の内へと変わったことが、
俺たちは大人になったんだ、と……
もう、あの頃とは違うんだ、と…
そう教えてくれているような
そんな気がして。
なんだか切なくなった俺は、誤魔化すように、
翔ちゃんが遠足のおかずを分けてくれたような卵焼きを口に放り込んだ。
それは、やっぱりちょっと大人の味だった。
「よし!腹も一杯になったし、ちゃっちゃと片付けちまうか?」
「でも、そんなに、やってもらうことも…」
やんわりと遠慮がちに言う俺に、
「せっかく来たんだからさ、何かやってかなきゃ!手分けしようぜ!
ニノ、仕切ってくれよ!
俺たちなんでもやるからさ!
な♪智くん?」
仕方なく、着替えの残りを翔ちゃんに、
キッチンを大野さんに、
本とかDVDは俺が……
それぞれ片付けることにした。
そんなには無いしても、若干艶っぽいDVDや、
如何わしい写真集もあるから、
本はやっぱり、俺が…
段ボールから順番に参考書や文庫本を出して
棚に並べていく。
同じ部屋にいる大野さんは、軽く鼻唄を歌いながら、皿を食器棚に出している。
……この人、綺麗な声だな~…
なんていう歌なんだろ?
なんていうか…こう…透明で、
聞いていて心地いいハイトーンな…
「ニノ~?これどこに入れるの~?」
寝室から翔ちゃんが俺を呼ぶ。
もう~…いちいち聞くんなら、自分でやった方が…
「なに~?どれ??」
それでも俺は、そんなのが嬉しくて、
ついついにやけながら、
大好きな人がいる部屋へと行く。
自分でも気が付いていないけど、
軽くスキップしながら……
そんで、そんな俺を、大野さんは歌いながら見ている。
……あ~、こっちももちろん、俺は知らないけどね~