第6章 青春のシトリン【N×S】
先生方に挨拶し、始業式で紹介されることに。
挨拶は別の先生が代表でしてくれるから、
俺は簡単に名前を言うだけでいい。
始業式が行われる体育館に、
ぞくぞくと生徒たちが集まってきた。
俺の方を指差して何やら囁き合っている女の子たちが気になるけど、気付かない振りをした。
校長先生に続いてステージの上に上がると、
たくさんの目が一斉に俺達新任教師に向けられた。
やっぱ俺、間違ったかな~?
先生になるなんて、俺には……
その時、横に並ぶ先生方の中で、ひと際カッコ良くて目立ってる翔ちゃんと目が合った。
翔ちゃんは『頑張れ!!』という様に、俺にだけ分かるように小さくガッツポーズをしてくれた。
それが俺にどんなに勇気をくれたか?
「二宮和也です。担当は生物です。よろしくお願いします」
滞りなく始業式が終わり、副担任になる1年生のクラスに挨拶に行き、教師一日目のイベントはなんとか終了した。
「は~…疲れた…」
喫煙所でタバコを吸っていると、そこに翔ちゃんが来た。
「ニノ、お疲れ~、タバコまだ止めてないの?」
「しょ、櫻井先生…もうすぐやめますよ!」
「ははは、ホントかな~?」
眩しい笑顔で、翔ちゃんも煙草に火を付けた。
……自分だって、止めてないじゃん…
分煙カウンターに寄り掛かる翔ちゃんは、
あり得ないカッコよさで…
俺は慌てて見ないように外に目を向けた。
「あのさ〜」
「えっ?」
「それ止めてよ、櫻井先生、っていうの」
「でも…櫻井先生だし…」
「いいって!今まで通りで。」
……今まで通りって、そう言う訳にも行かないよな?
生徒の手前もあるし…
「そう言えばさ、智くんにはもう会った~?」
「…まだ…」
「あいつ、始業式サボりやがって~
今から行ってみるか?」
「……うん…」
大野智……
あの人も、この高校にいるんだよな…
知ってたけどさ…