第6章 青春のシトリン【N×S】
【ニノ】
「ふぅ〜………よし!行くか!」
大きく深呼吸をした俺は、
一歩踏み出そうとして後ろから声を掛けられ、驚いて立ち止まった。
「気合い入ってんな〜」
「翔ちゃん!!」
振り向いたら、にっこり笑うその人がいた。
「待ってたよ!今日から同僚として、よろしくな!二宮せんせ♪」
「こ、こちらこそ!いろいろ教えてください!」
深々と頭を下げた俺の肩を、
ポンと叩いたその人……
俺が何年も忘れられなくて、
ついにはこんなところまで
追いかけてきてしまった人……
櫻井翔………
「この間は悪かったな〜
せっかく連絡もらったのにさ…」
「い、いえ!しょ…櫻井先生、忙しいから…」
「今度埋め合わせするからさ」
「え?埋め…」
「翔く〜ん♪おっはよー」
その時、ふたりの女の子が翔ちゃんを両側から挟むように腕をとった。
………うそっ(゜゜;)
「お、おはよー!つかさ、お前ら、翔くんは止めろって言ってるだろ〜?」
「いいじゃん!智くんもそう呼んでたし♪」
「さと…って///ちょっと、お前たち〜」
「キャーーー♪♪」
その子達は、弾けるようにコロコロと笑って、先に行ってしまった。
「…ったく、あいつ等ホントに……
ごめんな〜、ニノ、朝から…」
「うんん…相変わらず人気者だね〜
しょ、櫻井先生」
「櫻井先生ってさ…(^_^;)
まあ、緊張するなって言っても無理だろうから、肩回して、力抜いてこーぜ!」
昔と変わらないキラッキラの笑顔に
俺は上がる心拍数を押さえようと、
胸に拳を当てた。
「うん……」
なんの因果か、
俺は一番向いてないことは分かっている、
高校教師なる職業を選択し、
晴れてこの4月から、私立高校で教壇に立つことに。
その原因の全ては、
隣で屈託なく笑うこの王子様のような人…
この人のせいなんだ。