第5章 復活アメジスト【S×M】
【松本】
打ち合わせに向かう廊下で
翔くんの声の余韻に浸る。
「おう。頑張れ~」
昔から…大好きな声。
少しハスキーで
それは喋ってる時よりも
歌ってる時のほうが顕著で
特に高音のかすれ具合なんか
もう…サイコー…
でも喋ってる時の声は
低くて
温かくて
甘くて…
ベッドの中の翔くんの甘い声…
メンバーでは俺しか知らない
愛を囁くとき
俺を揺さぶるとき
ナカに…証を放つとき
離れてからもう…
10年以上たつのに。
俺は…忘れられないでいる。
翔くんの何もかもを
ずっと引きずってるんだ。
今は…わかっている。
あの時の俺たちは
恋愛をしていたんじゃない。
いろんなことが不安で
寄り添い合っていただけなんだ。
一番安心をくれそうな
翔くんにくっついて
満たされない心を
身体で満たして……
あの時はそれを
幸せだと思っていた。
お互い20代の前半で
勢いもあったと思うけど…
翔くんのことは
ホントに昔から大好きだったから。
でもそれは
あの時の自分を守るため。
嵐としてではなく
一人の人間として付き合う中で
翔くんの気持ちを見つめたり
翔くんとの未来を考えたり…
なんてことはしていなくて。
不安を忘れるために身体を繋げて
一時イットキの快楽を安心にすりかえて
翔くんに抱かれることで
「まだ頑張れる」「続けていける」
って思える自分を探していただけ…