第5章 復活アメジスト【S×M】
「じゃ、俺、もう少し打ち合わせ行ってくる」
「おう。頑張れ~」
手を挙げた俺に、潤は優しく微笑んだ。
………気のせいかな?
その笑顔が、あの頃の潤と重なって見えたのは…
そんなはずは、ないのにね…
「おっ、旨そっ♪」
そこへニノがやって来た。
大抵、潤が席を立った後に、見計らったかのようにやって来るのがニノだ。
俺と潤が『鍋部』と呼んでいるのは、
まあ、ただ本番前に、ただ鍋を食べてる、ってそれだけなんだけど…
智くんと相葉くんの『スイーツ部』に席を置いていた俺は、身体を絞っている関係で、甘いものは量食べられない……
そこで、鍋なら……
ということになった。
潤と……
「じゃあさ、鍋にしようよ♪バランスもいいし、野菜もたっぷり摂れるしさ」
………なんだか不思議な感覚だった。
一定の距離を取ることが当たり前になっていた潤が、急に隣に並ぶ毎日に、
戸惑いと喜びを感じていた。
「これ見て〜、公式サイトに載せていい?」
そう言ってニノが見せた写メは、
俺と潤が鍋を囲むワンショット。
自然に見えるその一枚は、家でふたり、鍋を食べていた過去を思い起こさせた。
黙って見つめる俺に、ニノが、
「スタイリッシュでしょ?鍋なのに」
そう笑った。
どうして今になって、そんなことを思い出すんだろう……
もう、当の昔に封印したはずの過去なのに…
あの頃の俺たちは、仕事のない毎日や、
後輩がどんどん追い越していくような焦りに、身を寄せあって居たにすぎない。
……それは、恋じゃない…
お互いにそれに気付き始めた頃、
徐々に嵐の人気に火が着いた。
少しずつ増えていく仕事。
掛けてもらえる声の多さと温かさ……
待ちわび、願い続けたその時が、
俺と潤の別れの時となったんだ。
……もう10年以上、昔の話だ。