第5章 復活アメジスト【S×M】
【櫻井】
俺の目の前で、少し厳しい表情で
鍋の灰汁アクを取る男……
嵐のコンサート隊長。
松本潤だ。
真面目で、何事にも一生懸命、
手を抜くという言葉は、
この男の辞書には、恐らくない…
「今度のときは、
豚肉を下茹でしてもらっとくよ♪」
彼は、灰汁取りのお玉を片手に、
爽やかすぎるスマイルを
俺に向けた。
「おー、そうだね…次は東京か…」
「そ。キムチ鍋かな~?楽しみだね♪」
何が切欠だったのか…
俺は、最近になって、急に彼との距離を縮めた。
別に意識してそうしてる訳じゃないけど、
気が付けば側にいたりする。
今までは、5人でいる時も距離を取っていた俺たち…
ステージやテレビでも、
スキンシップはほとんど取ってこなかった。
唯一、雑誌の取材などでは、
『櫻井さん、松本さんの肩に手を置いてください』
何て言う注文が多いから、
笑顔でそれには答えて来たけど…
なぜ、そうしてきたのか……
不自然な距離を、保ってきた理由…
それは、
俺と潤が以前恋人同士だったから。
10年以上前になるかな?
俺たちは、仕事でも私生活でも、
一番近くにいる存在だった。
あの頃は、
本当に潤が好きだった…
潤のことを一番に考えていたし、
大切に思っていた。
身体の相性も悪くなかった…
いや、むしろ良かった。
誰が、どっから見てもカッコ良くて、
そんで、実は天然。
コンサートを作り上げていく姿には、
スタッフはもちろん、嵐のメンバーさえ、
誰もが一目置き、全幅の信頼を寄せていた。
そんな彼が、俺といる時は別人のように可愛くなって、ベッドでは俺しか知らない顔を見せた。
そんな潤に、俺はもう夢中だった。
その頃は、今ほど仕事がなかったから、
一緒にいられる時間もたくさんあって…
俺たちはベッドで、これからの…未来の嵐像について、
夢を語り合っていた。