第4章 琥珀色の恋【A×N】
【KAZUNARI】
何が………起きた?
雑巾を取りにきた洗面所で
速すぎる鼓動が鳴り止まない胸を
ギューって押さえて考える。
唐突に腕を掴まれて
心臓が飛び出しちゃいそうなほど
…驚いたのに。
それだけで
ジューブン驚いたのに。
俺…さっき…
相葉さんの、腕の中に………いた?
なんで、だっけ…?
どうして…そうなった?
全部一瞬のことだったから
よく覚えてないんだけど…
よろめいた、とか…
そういう偶然な感じじゃ…なかったよな?
おふざけ、でもなかったよな?
…抱きしめられ…た?
いや………
…なわけ…
…なわけ………ないのに
脳が状況を処理する前に
相葉さんのことを突き飛ばしていた。
拒絶を示す
悲しい言葉とともに…
『知られちゃいけない』
本能が…そう囁いた。
俺に生まれかけてるこの気持ちは
ただでさえマイノリティー…
それを
同じ嵐のメンバーに対して抱いている
なんてことがもしも公になったら…
…みんなに迷惑がかかる。
もちろん…相葉さんにも。
それだけは避けたいから…
だから……
『知られちゃいけない』
鼻の奥がツン…としてきて
涙が盛り上がってくる。
ようやく…認めてやったのに。
…この気持ち…
かけがえのない大切な存在だとは
前から思っていたけど
それが…いつの間にか…
恋、に…なってたこと…
ようやく…そこに辿り着けたと思ったら
それは禁じられた恋…だなんて。
「…ふぇ…っ…」
思わず漏れ出た嗚咽を
慌てて両手で塞ぐ。
閉めたドアの向こうに
相葉さんの近づいてくる気配がして
「…ニノ?」
恐る恐る…という感じの声が響く。
「…あ、ごめっ…雑巾がっ…見当たらなくて」
急いで顔をゴシゴシ擦って
大きく何回か深呼吸…
「キッチンのタオルで拭いちゃったから…」
「…あ、そ…ぉ……ありがと……」
よし……いくぞ。
大丈夫。
バレないようにやれる。