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【M×N】インターホンはお静かに

第1章 相変わらずな俺ら





「だよねぇ~
いくらなんでもないかぁ~」



そうだった

コイツ、変に鋭いとこあるっていうか……

無意識に核心ついたりして、気は抜けねぇな



「センセの彼女なら、美人で大人なんだろね~
正直俺、振り回されっぱなし」




両手いっぱいの紙袋が、それを物語ってる


だけど…それが嫌だって言ってんじゃない


ものすごく幸せそうだ




「いや…どっちかって言うと、可愛いタイプかな。
…俺も振り回されっぱなしだよ」

「へぇ~意外!」

「そうか?」



笑いながら、妙な感覚に陥る


恋人の初恋の相手と、こんな風にしてるなんてな


少しの嫉妬と、
コイツが、アイツを受け入れてくれなくて良かった、なんて感謝したりして



「そう言えばさっき…っわっ、時間!俺、行かなきゃ。
センセ、今度は彼女さんに会わせて下さいね?」

「今度な(笑)」




鳴り出したケータイにアタフタしながら、
最後まで笑顔を振り撒いて、雑踏の中に消えてった




腕時計を覗き、
そろそろかな、と周りを見渡す



「あ…」



チビなのに、何故か直ぐに見つけられる


猫背の頼りない歩き方


高校生にも見えない童顔に、華奢な身体




俺に気付いて、少しだけ口角を上げる



「お待たせ。
売り切れてなかった!」



予約してなかった新作ゲームは、都内じゃどこも売り切れで


ここならあるんじゃないかって、自ら車を出す俺は、


ホント振り回されっぱなしだ



だけど…きっとね


アイツみたいに、
端から見たら幸せそうにしてんだろね




「良かったな。買えて」

「うん。代わりにさ、
センセの行きたいとこも付き合うよ、俺」



ご機嫌な恋人は、

めずらしく素直に、可愛い笑顔を見せてくれる



「そうだな。じゃ、
今度付き合って貰おうかな」

「今日はいいの?」

「まだ早いだろ」

「早い?」

「それより、もう帰ろうか」

「もう?めずらしいね。
いっつも俺のが帰ろうって言うのに?」




不思議顔に、
"いいから"と背中を押した


きっと笑うだろうな

お前が初恋の相手と再会だなんて、内心穏やかじゃない

それでも、俺のだって見せたいのも本音







だから…今はもう少し

俺らの関係は

誰にも"秘密"にしよう


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