第3章 秘密
保健室から見える校庭
遠目に見える見馴れた姿
大勢に混じるアイツの声
ただ、それだけの
ありふれた光景にも
安堵してる自分がいる
元気そう、みたいだな
あの日から、
マトモに顔を合わせていない
廊下ですれ違い様、
目線がぶつかるくらいだ
そりゃ、避けられて当然か
部屋を飛び出したアイツを、
無理矢理でも引き留めなかったのは俺なんだから
それに……
彼女、……綾子が残した言葉
"昔みたいに会いたい"
もちろん、即拒否したけど
これは、脅迫だよな?
"アノコとの事、
バレたら大変よね"
当たり前だろ
ただでさえ、認められない関係なんだ
ましてや、
男同士なんだからさ
火にかけたケトルが、音を立て、湯気を噴き出す
一人前のコーヒー豆をフィルターに乗せ、お湯を注いだ
たち込める芳ばしい香り
ため息ばかりが宙に消える
前にカズとのことが噂になった時でも、
その時は、ホントにただの噂だったし、
否定すれば済むだけの事だったけど……
また…ってなれば、
噂が出たという真実だけで
何らかの注意はあるだろう
それに…
嘘だと、ただの噂だと
言葉を重ね、真実を隠す度に
俺らの関係が儚く思えて……
「今日も…
美味いのにな…」
コーヒーをひとくち含み
カップをデスクに置くと、
動かないドアを見つめ、
どこかでずっと……
待ってた