第14章 【月島蛍】雨はいつかあがるという事[R18]★
さんの事は結構前から知っていた。
歳が離れている兄の彼女として初めて家に来たのが、僕が小6。さんが短大1年の時だった。
学校から帰ると、その人は良く見慣れた兄のサイズの合わないTシャツを何故か着ていて、僕は不思議に思ったのを覚えてる。
「こ、こんにちは。弟さん?」
「、、、。ソレ兄ちゃんのTシャツじゃ、、。」
「あぁ!蛍、お帰り!いやぁー、、帰って来る途中ですごい雨降って来ちゃってさ!Tシャツ貸したんだ。」
それは今日と同じ、暑い夏の日だった。
僕は子供なりに、この人は兄の特別な人なんだと、なんとなく感じ取っていた。
それ以来、さんは少しづつ月島家に馴染んでいった。けど、僕はと言えば、兄と険悪になって以来ろくに会話もしていなかった事もあって、さんとは挨拶程度の関係だった。
それなのに、いつのまにか僕はさんの事を兄の彼女だと分かっていながら想いを寄せるようになっていた。
先に好きになったのは完全に僕だった。
だけど、こんな関係になったキッカケを作ったのは、彼女だった。
僕が高校に上がる前の春休み。
真昼間にチャイムがなって、インターフォンのモニターを見るとそこにはさんが写っていた。
(?兄ちゃん仕事なの知ってるはずだけど、、、)
「どうしたの?兄ちゃん仕事だけど。」
「知ってる、、、」
「?じゃあ何?」
そう聞き返した瞬間、勢い良く僕の胸の中に飛び込んで来る彼女。
「蛍くん、、、」
「何のつもり?離してよ。」
「嫌、、、、」
「、、、、迷惑。早く帰りなよ。」
「、、、、、、、、
その、冷たい瞳で、
もっと私を見て、、、」
その言葉に僕は、開けてはいけない扉を開けてしまった。