第3章 【黒尾】憂鬱な猫は空を見上げ★
「ねえ、鉄朗。夏の大三角形ってなんだっけ。」
「こと座のベガ。わし座のアルタイル。はくちょう座のデネブ。」
「凄いじゃん。ね、どれかな。」
「アレじゃない?」
繋いだ方の手を空にかざして指を指す。
「あ、ホントだ。なんだっけ。七夕の織姫と彦星だよね?ベガが織姫だったかな、、、」
「たぶんそう。」
「雨じゃないから会えたかな。」
「天の川も見えないし、余裕で会えたんじゃない?」
「ふふっ、何それ。」
「俺だったら川が流れようが雨が降ろうがちゃんに会いに行くけどねー。」
「私の事大好きだね。」
「うん、が好き。」
上半身を起こして、星空を遮るように彼女の唇を奪う。唇を離すと、彼女は一瞬不思議そうな顔をしたあと、フワッと優しく笑って俺の背中に手を回した。
「私も好き。でもさ、うちらは離れ離れじゃないじゃん。」
「、、、、そうですかね?」
「そうだよ。確かに全然会えてないけど。鉄朗は違うの?」
「んー、、、俺は寂しく思う程度に距離を感じる。」
そんな回りくどい言い方をすると、は案の定「めんどくさっ!」と言って背中に回していた手を解く。
「そりゃあ会う時間なかなか取れてないけど。私は鉄朗との間に距離なんか感じないよ?だって特別だもん、私達。」
「とくべつ?」
「普通に彼氏彼女だけどさ。なんか違うの、鉄朗は。今まで付き合った人と全然違う。繋がり方が。」
「、、、ちゃんは俺を彼氏だと思ってくれてんの?」
「え?他になんかあるの?」
「、、、、飼い猫。」
「こんなでかいネコいらないよ。」