第3章 【黒尾】憂鬱な猫は空を見上げ★
目的地に着き駐車場に入ると、夜だというのに思いのほか車が停まっていて二人して驚いた。
どうやら東京郊外の天体観測スポットとして有名らしく、小さな子供連れのファミリーから、どデカイ望遠鏡を抱えた人まで、芝生が生えた広場は賑わいをみせていた。
適当な場所を見つけ、二人で丁度寝転がれるくらいの大きさのシートを敷き腰を下ろす。
「鉄朗くん、準備いいじゃない。」
「僕、デキル男ですので。」
が犬でも扱うみたいにガシガシと頭を撫る。すると今度は彼女がガサゴソと自分のバッグを漁り何か取り出した。
「じゃじゃーん!」
「お、双眼鏡?見る気まんまんじゃん。」
「まぁね。でもさ、いらなかったかも。」
そう言うと、彼女はごろんとシートに横になり、手足を伸ばして空を仰いだ。
「すっごいね、、、、」
瞳に映るキラキラした月明かり。
俺は堪らなくなって彼女の髪を撫でる。
久しぶりの感覚を確かめるみたいに。
「ほら、鉄朗も。」
「はいはい。」
並んで寝てみると、最初に夏草のにおい。
そして、視界いっぱいに広がる夜空には、数えきれないほどの星が瞬いていて、俺は圧倒され息を飲んだ。
「、、、、、これは想像以上。」
「自分で誘ったくせに。」
クスクスと笑う彼女の右手が俺の左手に触れた瞬間、指が優しく絡む。
「宇宙にいるみたい。」
「そうだね。」
俺もそれに答えるように、そっと握り返した。