第12章 【国見】雨粒の子守唄
シャワーから戻って、タオルを渡して風呂場に案内してやると、そこでまた騒ぐ···
『絶対、覗かないでよ?!』
「覗くか、アホ」
『なんで覗かないのよ!そんなに魅力ない?!』
「じゃあ、遠慮なく」
『覗かないって言ったじゃん!』
「あのなぁ···」
どうすりゃいいんだよ、オレは!
···まったく。
先に戻ってるからな?と声をかけ、適当に飲み物やお菓子を持って部屋に入る。
窓から見える景色は、さっきと変わらず土砂降りの雨しか見えなくて。
どんだけ降るんだし···と思いながら髪をかきあげた。
窓辺に寄りかかれば、窓に当たる雨粒の感触がガラス越しに伝わって来て···それはポツリ、ポツン、ポツリ···と自由に音を鳴らす。
きっと、ウチのキャプテンなら···こういう時···
及「ねぇ、耳を傾けてみて?雨音が、音楽を奏でてるみたいじゃない?」
とか、あのキラッキラの笑顔を撒き散らしながら言うんだろうな。
「サムッ!」
想像したイメージを振り払うように頭を振って、両手で体を擦った。
『···なに、してんの??』
不意に掛けられた声に顔を上げれば、風呂上がりのが怪訝そうにオレを見ていた。
「別に。ちょっと···キモイ事が浮かんで身震いしてただけ」
『そっか。それよりシャワーありがとでーす。おかげさまで髪がサラツヤ!そしてサッパリ!』
だろうよ。
見るからにサラッサラになってんし。
『でさ!シャワーしながら考えたんだけど、聞いてくれる?』
「なに?」
『いや、そうかしこまって聞かれるのも···』
聞いてくれる?って言うから聞こうとしたら、急にモジモジし始めて、なんだ?
「で、なに?」
『あ、えっとね?今日は午前練だけだからって言っても、部活はあったワケじゃん?なのに私の買い物とか付き合ったくれたり、一緒にいる時間を作ってくれたりとかしたからさ···お礼に、ですね···ひとつだけ、お願い聞いてあげようかな?···なぁんて、アハハ···』
「お願い?」
『うん···ひとつだけなら、なんでもお願い聞いてあげる』
なっ、なにこの急展開!
お願いって、オレが?!
ヤベー、この2人しかいないオレの家!
2人きりのオレの部屋!
そして2人して風呂上がり!
お願いって···いいのか?!
「ホントにいいのか?」