第12章 【国見】雨粒の子守唄
ポソッと呟いた言葉に軽く制裁を受けながらも、じゃれ合いながら歩く。
空を見上げれば、が言うようにどんよりとした雲がモクモクとし始めて、湿り気を帯びた空気が肌にまとわりつく。
夏特有のアレか?
夕立、とかいうヤツが降るのか?
だったら急いだ方がいいな。
なんせオレ達はいま、傘がねぇ···
なんて思ってるうちに。
『ん?···あっ、大変!雨が降り出した!』
乾き切ったアスファルトを塗りつぶして行く大粒の雨が降り出す。
それはあっという間に土砂降りへと変わり、いわゆる···
『なにこれ!ゲリラ豪雨ってやつ?!』
そいつが駆け出したオレ達をいとも簡単にびしょ濡れにして行く。
買い物した荷物を抱え込み、手を繋いだまま全力で走る。
やっとの思いで家に着いた時には、あちこちから滴が落ちるほどに2人ともずぶ濡れになっていた。
「ちょい待ってろ、タオル取ってくるから」
玄関にを待たせて、ひと足先にタオルを取りに廊下を歩く。
脱衣所で濡れた服を脱ぎ捨てタオルを持って戻れば。
『ちょっ、なんで裸て戻って来るのよ!変態?!』
「うっせぇな、1枚履いてんだろ。ほら、タオル」
持って来たタオルを放って、自分も濡れた髪をガシガシと拭く。
っていうか。
びしょ濡れになったブラウスから透ける物に、柄にもなく動揺する。
「お前さ、とりあえずオレの服貸してやるから着替えろ。目のやり場に困る」
『目のやり場にって···あーっ!ちょっとこっち見ないでよ!バカっ!』
「見たくてみてんじゃないっての!むしろお前が見せてんだろ!アホ」
渡したタオルで胸元を隠す姿に、べつの意味で困りながら脱衣所へと引っ張りこみ、ちょっと待ってろと押し込んだ。
部屋に入って、アイツが着れそうな服を探すも···元々の身長差とかを考えたらどれも大き過ぎやしないかと···迷う。
結果···
『私にこれを着ろって?』
「他に思いつかなかった」
『普通は彼女に彼シャツ~とか考えない?』
「オモイツキマセンデシタ」
『なんで棒読み?!もう···ジャージとか色気もなんもない~!』
いや、そんな物があったらあったでイロイロ困るっての。
オレいまパンイチだし。
···どうせ部屋に行ったんだから自分も服を来てくりゃよかった。
ちと、後悔。