第11章 【赤葦】溺れる街★
濡れたブラウスから薄っすらと透けて見えるピンクの下着に気付き、俺は周りに男性客がいないか0.5秒で確認した。
(まったく、この人は、、、)
大雑把な性格のせいか時たま無防備な彼女を見ていると、ヒヤヒヤして仕方ない。
少し大きめなバレー部専用のタオルを首からかけ、濡れた胸元が隠れるのを確認して俺は肩をなでおろした。
すぐ横でジャンプを読んでいる彼女は心なしか頬が赤くて、さっきの反応もそうだけど今日はなんだか様子が違う。
(やっぱり昨日のラブレターもどきが良くなかったか、、、?)
そんな推察をしながらも、彼女の少し濡れた髪がなんだか色っぽくて、俺は逸る鼓動を悟られまいと深呼吸をした。
雑誌売り場の向こうのガラス面には、相変わらず激しく雨が打ち付け、数メートル先の景色すら見通せないくらいの大雨だった。
「ねぇ、赤葦。」
パタンと音を立ててジャンプを平積みの下段の棚に戻し、さんは俺の名前を呼ぶ。
「なんですか?」
「目瞑って。」
「?なぜ?」
「いいから、早く!」
「はぁ、、、」
「手、出して。」
「こうですか?」
「はい。」
「?何ですかこれ。」
「、、、、昨日のお返し。」
目を開けると、掌の上には小さく折りたたまれた紙が置かれていた。
「じゃあね。」
「え?ちょっと!」
そそくさと大雨だというのに店を飛び出していく彼女を追おうと思ったが、まずは掌のコレを確認しない事にはどうしようもない。
小さく折られた紙を急いで全部広げるとB5サイズのノートだという事が分かって、俺はそこに書かれている文字を目で追った。