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《HQ》真夏の条件 〜夢短編集・夏〜

第11章 【赤葦】溺れる街★




その日の夕方。
体育館の照明の点検とかで部活が休みになり、私は校門を抜け駅に向かって歩いていた。

相変わらず水分を含んだ空気。
どこで鳴っているのかわからない蝉の声。

歩いて数分。見上げれば灰色の雲が湧き出るように空を覆い、ゴロゴロと雷が鳴りはじめた。


「げ、また?」


そう呟いた瞬間、堰を切ったように大粒の雨が降り出す。アスファルトは一瞬にして色を変え、周りを歩いていた人達も小走りで屋根を探したり、傘を取り出し広げる。

私はすぐ近くのコンビニの軒先に雨宿りをしたけど、風で斜めに吹き付ける雨からは完全には避けきれず、仕方なくコンビニの中に入った。雨で濡れたブラウスが店内の冷気に触れた瞬間冷やっとして、凄く心地いい。

(でも今日は傘あるんだなー♪)

そう頭の中で呟いた瞬間だった。


「いらっしゃーせー」


やる気のない間延びした店員の挨拶が耳に入り、入口の方に自然と視線が向く。


「あ、さん。雨宿りですか?」

「あ、、赤葦!!、、、そうそう!雨宿り!二日連続ゲリラとかついてないねー。」


私は、カバンから出しかけた折り畳み傘を咄嗟に元に戻した。


「なんか買うんですか?」

「ん?いや、ジャンプ立ち読みして暇潰そうかなーなんて。」

「さんジャンプ読むんですか?」

「読む読むー!ONE PIECEは日本国民の嗜みでしょーが。」

「それは言い過ぎですよ。」


突然の遭遇に、うまく平静を装えない自分がいる。胸のあたりが苦しくて、鼓動がいつもの倍早い。


「さん。」

「ん?」

「その、なんて言うか、、、目のやり場に困る感じなんで。コレ掛けといて下さい。」


フワッと首にかけられた大きめのタオル。
両端が垂れ下がる自分の胸のあたりを見下ろすと、ブラウスが雨に濡れて下着が少し透けていた。


「あ、、、うん。ごめん、ありがとう。」


(やばい、、、、めちゃくちゃ顔熱い、、、)



赤葦京治という男はつくづくズルイ男だ。

私は両手で広げた分厚い週刊誌に視線を落とし、必死で集中した。


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