第11章 【赤葦】溺れる街★
「こぉーーのーーはぁーー」
「何だよ、また赤葦?」
「んだんだ。」
「どこの田舎モンだお前は。」
机に突っ伏して項垂れる私を見下ろす木葉は、ハァと溜息をついて、「またか」と言った。
ミスター器用貧乏として名高い彼、木葉秋紀は私のクラスメイトで同じバレー部のチームメイトで、恋愛の相談相手だ。
「赤葦くんが、私を大食いの先輩としか思ってない件。」
「その案件、何回目だよ。だからそんな気にするなら食うの我慢しろって。」
「むりー。赤葦といるとご飯が美味しい。」
「お前、絶対やめる気ないだろ。」
「だってーー、、、」
「何度も言うけどさ?赤葦はそんな理由で恋愛対象から除外したりしないだろーよ。」
「かなぁ?」
「まぁ、そもそもお前が恋愛対象になってるか知らねぇけど。もっとさ、女を見せてけよお前は!」
「そんなあざとい事器用に出来ないよー。」
女の子っぽく迫るなんて、今更恥ずかしくて私には無理だ。そんな手法を使うタイミングはとうの昔に過ぎ去った。今となってはきっと飯友くらいの感覚になってしまっていて、私自身もそんな関係に気持ちよく収まってしまっている節がある。
「あ、ねぇ見て。ラブレター。」
「は!?何だこれ、紙ナプキンじゃん。」
「うん。昨日ファミレスに行った時、赤葦がくれたの。」
「ほー、、、好きですって、それ両想いじゃねーの!?」
「いや、この前の木葉のラブレターの話の流れでだから、、、ね。」
「まぁーた、ペラペラと人の事を話しやがって!」
「ごめんってー。」
「ったく。、、、じゃあさ、お前もラブレター書けば?んで告白しちゃえよ。」
告白?
ラブレター?
私が?
あまりに自分らしくないワードになんだかソワソワしてしまう。
だけど、恋愛なんて似合わない。今更女の子として見てもらえない。って言う勝手な言い訳をやめないと先はないぞ!と、恋愛指南役の木葉に言われて。その言葉が痛いくらい胸に突き刺さった。