第11章 【赤葦】溺れる街★
突然の豪雨から逃れるように、ファミレスに逃げ込んでからもうすぐ2時間が経とうとしていた。
「でさー、木葉がね、自分へのラブレターだと思ってたやつが、結局隣の席の子に宛てたやつだったの!」
「木葉さんらしいというか何というか、、、」
「でしょー!しかもさ、面白いのが送り主が男でね。隣の席は女子だったんだけど、、、。男からラブレター貰ったと思って、誰にも話せなくて一週間一人で悩んでたんだって!マジで爆笑しちゃった、私!!」
「それ、木葉さんかなりの災難っすね。まぁ俺はそんな木葉さんいいと思いますけど。」
「だよねー。アイツ本当さ、バカだけど良いやつだよね!」
1時間ほど前に頼んだ山盛りポテトはとっくに二人で食べきって、俺とさんは再びメニューを開き晩御飯をどうしようかと考え始めていた。
外はとっくに雨も上がり道路の雨水も引いて、いつも通りの景色に戻っている。
「それにしても、男でラブレターなんて珍しいっすね。」
「だね。まぁ私はそういう古風な男子も嫌いじゃないけど!、、んー、、ミートスパかなぁ。唐揚げハンバーグセットも捨てがたい、、、」
「なんか意外っすね。」
「どーいう事?」
「さん、そう言うの面倒臭がるかと思いました。」
「どんな方法でもさ、好きって言われたら嬉しいじゃん。普通に。」
(例えばそれが目の前の後輩でも?)
頭の中でさんに問いかける。
「、、、なるほど。俺、ハンバーグとエビフライのセットにしますけど。さん決まりました?」
「決まった!唐揚げハンバーグ。」
「じゃ、呼びますね。」
ラブレターを書こうなんて、人生に一度も思った事がない。けど、もし書くんだとすればとびきり好きな人に書きたいものだ。
俺はテーブルの窓際に置かれた紙ナプキンとアンケート記入用のボールペンに気付き手に取った。
「はい、さん。」
「何?」
" 好きです。 "
下手くそな字で書いた紙ナプキンを俺は向かいに座るさんに渡した。