第10章 【白布】君の合図で始まる夏★
「えっと、、あの、、人を待ってて、、、」
「そうなんだー?友達?どこからきたの?」
どんどん詰め寄られ、意図せず距離が近くなる。
質問責めに合っていると、男の片方が私の肩に手を回してくるから、怖くて身体は勝手に震え出した。
「キンチョーしてんの?かわいー!色白いねー!海とかあんまり来ないの?」
「えっと、、あの、取り敢えず離して、、、」
部活柄背の高い男の人には耐性があるはずなのに、身体が完全に怖がっている。言葉もうまく出て来なくて、必死の抵抗も伝わらない。
私はしどろもどろになりながらも、掌をギュッと握り勇気を振り絞り口を開けた。
「やめ
「あ、そいつに絡んでも無駄っすよ。」
よく聞き慣れた声に遮られとっさに振り向くと、そこにはビニール袋を両手いっぱいにぶら下げた賢二郎が立っていた。
「ハァ?まさかこのモヤシみたいなんが君の友達?」
「ちょっと!!」
挑発的な発言に、私も黙ってはいられない。好きな人を侮辱されて、それでもガタガタ怯えているなんて出来なかった。しかし、賢二郎はそんな私の腕を引き寄せ自ら一歩前に出る。
サラッとなびく前髪から覗く鋭い瞳は、見たことがないくらい冷たかった。
「賢二郎、、、?」
「残念だけど、こいつ俺みたいなモヤシがタイプなんで。お兄さん達じゃムリですよ。」
自分よりも明らかに強そうな彼らに、全く動じず立ち向かって私を庇うその背中が、いつもよりなんだか大きく見える。そんな姿を見て、私の恐怖からくる緊張は、賢二郎によせる想いに簡単にかき消されていった。
「ったく。呼んでもちっとも振り向かねぇし。半分持てよ。」
「ゴメンってば、、、」