第10章 【白布】君の合図で始まる夏★
「で、何買えば良いんだ?」
結局賢二郎に日焼け止めを塗りたくられ、それでも不安で麦わら帽子をかぶって、私たちは浜辺に立ち並ぶ海の家の前で足を止めた。
「そう言えば川西何にも言ってなかったね。」
「ったく。まぁ、適当で良いだろ。混んでるから注文だけ先にしてくる。はここで待ってて。」
「ん、うん。わかった。」
ハァ、と一つため息をつき、賢二郎は昼時で人がひしめき合う建物の中に颯爽と入って行った。
(白いなぁー、、、、)
こんがり日焼けした人たちの中に入って行く色白な後ろ姿は、圧倒的に目立っていた。
おまけに、あの海の似合わないインドアな出で立ち。身体つきこそしっかりしているものの、夏の海というロケーションにおいての賢二郎には、私ですら違和感を覚えて少し笑ってしまった。
(こんな暑いのにパーカーまで羽織ってるし。まぁ見失わないしいいか!)
一人ぼっちになって周りを見渡すと、目につくのは日焼けが似合う、セクシーな水着を着こなした女の子たち。
この日の為に購入した自分の水着に視線を落とす。デパートの特設コーナーで、小一時間頭を悩ませて選んだ物だ。
男子ばっかりだし、あまり張り切ったのは恥ずかしいし、、、かと言って、ワンピースじゃ子供っぽい。せっかくだからビキニにしたいけど、賢二郎に似合わないって馬鹿にされたらどうしよう、、、とか。
悩み抜いて手に取ったオリーブ色にボタニカル柄をあしらった少し南国チックな水着。昨日家で試着して姿見の前に立った時は、まぁまぁイケるんじゃない!?と思ったけど、いざ海に出てみると何だか全然似合ってない気がして、無性に悲しくなってくる。
「ハァ、、、」
肩を落とし深いため息をついた時だった。
「お姉さん、1人?」
声を掛けてきたのは、夏の海がよく似合う、金髪に色黒の見るからにチャラそうな、長身の男二人組だった。